過去に行われた夜音車企画についての記事です。
夜音車企画を観に行ったのはvol.1とこの時vol.7の2回のみ。自分のディストロを出すということもあり会場前からその場にいて色々見ていたのと、この日のことはどうしても書いておきたかったので、メモや記憶を掘り返して書いています。
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夜音車fanzine & distro presents “experiment of life vol.7”
2007. 10/7(sun)@京都 立命館大学衣笠キャンパス学生会館小ホール
open / start : 12:00 charge : カンパ制(1000円程度)
Ampere(from USA) / La Quiete(from Italy) / killie / heaven in her arms / balloons / yarmulke / bed / burning sign / lions
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10月6日から8日まで3連休ということもあり、夜音車企画の前日から京都に行って、ついでにボロフェスタにも行こうと事前に計画。
その前日の5日は、仕事後に下北沢ERAに直行してAmpere / La Quieteジャパンツアー初日を観に行き、ライブ後は愛媛から来ていた友達とそのまま下北沢で2時くらいまで楽しく飲み食いした後、タクシーで家に帰って京都行きの準備をようやく始める(当時の私は中野在住)。いつもながら持っていくディストロの準備に時間がかかってしまい、結局寝ずに出発。新幹線で移動中に仮眠を取り、京都に到着。
この時点ですでにボロフェスタの赤い疑惑の出番には間に合わず…。そして着いてから知人に聞いたところ、タイムテーブルが当日になって急遽変更になったらしい。どうやら野外ステージでの演奏ができなくなってしまったようで、その野外ステージ出演のバンドを講堂内のステージ(前後2ステージあった)のタイムテーブルに組み込み、各バンドの演奏時間を若干減らすことで何とか対処したようだ。
僕は小谷美紗子、Go Fishがお目当てだったのだけど、タイムテーブルの変更もあり予定より出番が遅くなったため、当初の計画に狂いが生じる。
実はこの日の夜に神戸blueportでAmpere / La Quieteのライブがあるので、可能ならそれも観に行こうと考えていたのだ。当初のタイムテーブル通りなら、小谷さんとGo Fishを観ても神戸のライブには最初の1、2バンドは観逃すだろうけど半分以上は観られる、という計算だった。だけどタイムテーブルの変更によって、ここでお目当てを観るとなると神戸では最後の1、2バンドが観られるかどうか…ということになりそうだった。
とりあえず、せっかく来たからにはお目当ては観て、後のことはその時の気分次第で、ということにした。
そういえば会場の京都大学の西部講堂に来たのは4年振りだな…と思いつつぶらぶらして物販やフリマ、出店を見る。講堂の周りにはいくつも出店があり(3rd RECORDSも出店していた)、ビールを飲みながらふらついていると結構知り合いや見たことある人がいた。そして受付には東京のライブで良く見かける人(つぼっちさん)がいて驚いたなぁ…。何故関東の人がボロフェスタのスタッフをしているのかと…。
そんなこんなで結局、観たライブについては小谷美紗子さんとGo Fishだけだったのだけど、どちらも素晴らしかったなぁ…。これだけでも十分に観に来た価値があった。
小谷さんは今日のトラブルについてさらっと鋭いことを言っていて、この人はやはりパンクな人だな、と思った。あの歌声を聴けばそれは十分にわかるのだけどね。
そしていよいよGo Fish! Go Fishは寺井ショウタさんという人のソロ。ご存知の方が多いだろうけど名古屋の超強烈ハードコアバンド、Nice Viewのギターヴォーカルでもある。僕は以前からNice Viewが好きだったので、2002年頃のとある日に新宿のNAT RECORDSで「Nice Viewの人のソロ」というレビューを見て2種類のdemo CD-Rを即購入。demoといってもいずれもアルバムくらいの曲数が入っていてクオリティも非常に高く、そしてNice Viewとはまた全然別の方向性ながらも素晴らしい音楽性に完全に虜になってしまった。
この日はウッドベース奏者と二人で、音源よりも音数とテンポを落とした新曲メインの演奏。曲の良さ、メロディ、声の響き・・・、どれも素晴らしく、会場の空気にゆるやかに溶けてゆく。もう何度も観てるけど、また観たい。
その後はdOPPO橋本君&辻本さん、Discharming man/seeds of rhythm小野寺君と京大の学食で食事をした後、やっぱり行ってみようか…と思い立ち、一人神戸に向かう。
三宮駅に着いて早足でblueportへ。初めてだったけど場所は事前に調べてたのですぐ到着。
しかし着いた時間があまりにも遅く(そもそも京都を出た時間が遅かった)、ライブは最後の出番だったkillieの途中…。しかも受付に誰もいないので中には入ることもできず、入口辺りをウロウロしてるとimpulse records井川君がいたのでロビーでしばし話をする。井川君からは以前からimpulse recordsからリリース予定のコンピレーションCD「Here Comes The Bottom Lines… Vol.3」のジャケットデザインを依頼されていて、旅行の直前にようやくデザインが完成したので実際に見てもらおうと思い、ジャケットの試作品を作って持ってきていたのだった。メールや電話でやり取りしていたことを実際に会って話ができたので良かった。家に帰ってから最後の詰めに入ろう。
ライブ終了後、初めて来たハコだしせっかくなので中に入ってみる。横長の割と変わった作り。ここでも結構知り合いがいたけど時間も遅いためほとんど話せず、終電で京都にとんぼ返り。神戸の滞在時間は1時間弱!何しに来たんだか…。でも、徒労感や虚しさは不思議となかった。
日付が変わる頃に京都に戻り、事前に話していた通りトングー君(夜音車、The Lions)宅にお世話になることに。さっき会った小野寺君と、やはり明日のライブを観るために神奈川から来ていた土屋君(the faberというディストロをやっていたり、現在はURGE FILMとして様々なバンドのライブ映像を撮影している人)が先にトングー君宅に着いていたので、皆で軽く乾杯して話をしたり(何故かLUNA SEA話で盛り上がる)、土屋君が持って来ていたthere “was” a light that never goes outの映像(2007年9月15日にkularaと共に再結成した時のthere is a light that never goes outのライブ映像)を観たり、漫画を読んだりして(岡崎京子、魚喃キリコ、南Q太、黒田硫黄、五十嵐大介、鶴田謙二etc…と本棚の内容が僕の家と似ていた。トングー君の奥さんの趣味らしい)4時くらいまで起きていたが、明日は早いのでそろそろ寝ようということで就寝。
当日は8時くらいに起きる。起きた時間がやや遅かったようでちょっとバタバタと準備をして、バスでいざ立命館大学へ。
大学に着いて会場の小ホールのある建物の前に行くと、まだ建物が空いていなかったので近くのベンチで朝食。
しばらくすると建物が空いたので中に入り、会場設営の手伝いをする。大学のサークルの人達や、一足先に来ていたyarmulkeのメンバーなど結構な人数で手分けして機材などを運んだりした。
会場となる小ホールは座面を倒して座る木製のイスが備え付けてあり、ステージから遠くなるほど目線が高くなるように緩やかな傾斜がつけられた、なかなか立派なホール。
ステージは十分広かったのだけど、ステージと座席の間のスペースにステージと同じ高さの板材(元々このホールにある設備のようです)を置いてステージを拡張し、お客さんもステージに上がって観ることができるようにしていた。
これによってスタジオライブのようにバンドの間近で観ることもできるし、後ろで座ってステージをじっくり観ることもできるという、観る側としてはストレスの感じない空間になっていたように思う。
会場内は喫煙、飲酒が不可だったので、煙草を吸わない、飲酒をしない人にとってはとても居心地が良かったのでは。煙草を吸いたい人も、外に出てすぐ近くにある喫煙所に行けば吸えるわけだし。
今回の会場は大学の施設のため、使用の許可が下りれば料金はかからない。機材もサークルのものを使用するのでこちらもタダ。
しかし、そのように費用のかからない大学の施設での経済活動は基本的に許可されないそうなので、名目上、人を呼んでお金を取ることはできないことになっているらしい。
しかし、実際にはカンパ制にして強制的ではない方法でお金をもらうことは可能であり、また中での物販も可能らしい。つまり、上手くやればこういった場所で海外バンドのツアーのサポートはできるということである。
ステージ周りの設営が終わると、座席と座席の間に長机を設置して、その上にバンドの物販や個人ディストロを出せるようにしていた。(自分がディストロを出してるところの写真撮るのを忘れました…)
設営が一通り終わった後は僕はもうやることがなくなってしまったので、とりあえず外に出る。
トングー君がホールのある建物の入口の窓にアルファベットを一文字ずつ拡大してプリントした紙を貼っていたので、それくらいなら僕もできると思い手伝うことに。
彼は企画者なのでこの日は一日中忙しく動き回っていたけど、この時だけは作業をしながら割と落ち着いて話ができた。
彼と初めて会ったのは2002年だっただろうか。彼がまだ埼玉に住んでいた頃にfOULのライブなどで知り合い、京都に行ってからも僕が京都に行ったり、彼が東京に来たりしていたのでよく会う機会があり、その度に音楽のことやファンジンのことなどよく話したりした。
最近は話したりメールでやり取りする機会がめっきり減ってしまっているけど、彼のやっていることはいつも気にしている。
話を戻すけど、この窓に貼っている紙に書かれたアルファベットをつなげると、こんな言葉になる。
MORE THAN MUSIC!
MORE THAN EAT!
MORE THAN SLEEP!
トングー君から聞いた話では、9月に来日ツアーを行ったマレーシアのバンドblood of the wedding dressがトングー君宅に泊まった時に残していった言葉だそうだ。
アメリカでもヨーロッパでも日本でもない、マレーシアのハードコアバンドが情報量や経済状況や文化的な壁を超えていくような、そして観る人を熱くさせるような、素晴らしいライブだったらしい。そんな彼らの言葉は確かにシンプルなようで深い。
その後はまた中に入りバンドのリハをしばし眺めつつ、もう本当にやることがなくなってしまったのでどうしようかなと思っていたところ、同じく時間を持て余していた土屋君が「龍安寺に行ってみたい」ということで一緒に行くことに。何と龍安寺は立命館大から歩いて10分もかからないところにあるのだ。僕が龍安寺に行くのは中学の修学旅行以来、実に10数年振りだったり…。
細かいところは憶えていないけど、当時とさほど変わってない印象。座って石庭をしばらくぼーっと眺めてまったりしたり、敷地内の蓮の池を見て「balloonsの2ndアルバムのジャケットみたい」と言いながらぶらぶらした後、お土産屋で売っていた抹茶アイスを買って食べながら再び大学に戻る。
大学のホールに戻ると、一番目のthe lionsがちょうど始まるところだった。トングー君がギターヴォーカルをしているバンドで、観るのは初めて。
ライブを始める前にトングー君の挨拶。この企画の趣旨、諸注意、出演バンドや来てくれた人への感謝などを丁寧に話した後、ライブが始まる。
トングー君の家に行く度にライオンズグッズが増えていくのを目の当たりにし、ついにはライブハウスにユニフォームを着てくる程の埼玉西武ライオンズ狂になっていた彼だけど、まさか自分のバンド名にもそれを持ってくるとは…。その直球ぶりに驚きつつも、音自体はライオンズとは別に関係なく、勢いと青さが同居するメロディックパンクロック。試行錯誤した上でシンプルにやりたい事をやっていると思った。
そして次々とバンドが出てくるわけですが、全ては観られなかったこともあり各バンドのライブの感想については割愛します。どのバンドも慣れない状況にも関わらず良いライブをしていたように思う。(余談ですが、小野寺君はこの日はいち客として来てたはずなのに、なぜかPAを任され大活躍していた)。
自分のディストロについては見てくれる人が多く、いろんな人と話ができた。
以前からよく注文してくれた兵庫の木村さんが声をかけてくれてようやく初対面。昔のバンドだけじゃなくて最新の海外バンドにも詳しく(以前にチリの「Asamblea Internacional del Fuego」というバンドを教えてくれました。当時「チリのenvy」と言われていた)、是非とも会ってみたかった人だったので嬉しい。
Ordination of AaronのAcoustic 7インチなどを買ってくれた。
また、当日にこの日のライブの情報を知り、駆け付けたという人がWilliam Martyr 17を探してたらしく、嬉しそうに買ってくれた。なぜかtree recordsのseptember(90年代中〜後期に活動していた、曲後半で爆発しそうでしなかったりするところが微妙なようでなぜか絶妙にカッコいいバンド)の話で盛り上がったりした。
あと長野からsupermeというバンドの尾崎さんという人が原付バイクでこの会場まで来たということで驚く。しかもDischarming manパッチをカバンに付けている。ということで色々話し込む。supermeのdemo CD-Rをもらってしまった。(現在は長野でkazzadというバンドで活動しているようです)
そして、札幌でμ、ニノウデというバンドをしている高橋君という人がフランスのstonehengeのリリースを探しているということでコンピを買ってくれた。後でいろいろ話してみたら札幌の激バンドBlindのベースだったことが判明。1st、2nd demo共に良く聴いていたのでビックリ。(現在は、愛知でCrows Caw Loudlyというバンドで活動しているようです。バンド名からして気になりますね)
また、AmpereやLa Quieteのメンバーもいろいろ買ってくれた。
昨日、神戸blueportでちょっと会ったkzm君や、blueportには来ていたのにニアミスだった高野さんとも再会。kzm君はこの後bedのライブをハシゴするらしい(bedはこの日は京都でのNO AGEの来日ツアーに出演、ダブルヘッダーだった。立命館と京都の両方観に来てくれた人にはチケット代をディスカウントしたらしい。こういうアイデアは良いですね)。
ライブが終了したのは20時頃だっただろうか。時間は少し押していたようで、ちょっと早めに撤収が始まる。僕もまた撤収作業を少し手伝う。
打ち上げは大学の学食で行うということを聞く。それって大丈夫なのだろうか?と思ったけどちゃんと許可を取っているとのこと。そのアイデアと配慮と行動力には感心するばかり。
というわけで日曜の夜の誰もいない学食スペースを占拠。ここでようやくお酒を飲む。おつまみだけじゃなくてヴィーガン鍋まで用意されていたり(これは海外バンドへの配慮ですね)、特殊な環境もあり今まで体験したことないような心地良い打ち上げの雰囲気ができていた。いろんな人がいたので軽く挨拶したりはしたけどあまり多くの人とは話せなかった。でも何人かとは濃密な話ができ、あっという間に時間は過ぎる。bulbphone! distro/Boys of Canada矢野君、North of Americaの来日実現したら絶対行きますよ!
そして途中にトイレに行こうとしたけど場所がわからず探していると同じくトイレを探してる人が。CorruptedのTシャツを着ているので打ち上げ参加者だろうと思い話しかけて一緒に探すことに。お酒の勢いもあっていろいろ話してみると結構接点がある人で、僕のこともちょっと知ってくれてたりしてビックリ。バンドもやっているようでそういう話もしたけど肝心のバンド名を失念…。でも、きっとまたどこかで会うでしょう(その後の2009年3月21日、新宿NINE SPICEにて再会したその人はzdzis lawヴォーカルの園部さんでした。現在はpoetry of torchというバンドで活動しているようです)。
最後に集合写真(人が多すぎて僕は写ってません…)。
札幌の高橋君やR3-N7守川君&谷村さん等と一緒に京都駅へ向かうバスの最終に乗り、京都駅でちょっと話して解散。
でも僕と高橋君は行く宛がないので二人で漫画喫茶へ。疲れていたのですぐ就寝。
朝に漫画喫茶を出てからは、高橋君はbaseなどのレコ屋に行く予定とのことで、僕も一緒に行きたかったが疲れが抜けていなかったのですぐ帰ることに。再会を約束し別れる(この翌年の2008年4月、札幌でのSpiral Chordのワンマンライブで再会しました)。
京都駅から新幹線に乗り、あっという間に東京に到着。
知らない世界に飛び込むことは確かに躊躇や戸惑いは必ずつきまとうことだと思う。知らない人ばかりの場所にいるのは居心地の良いものではない。
それを越えていこうとする行動は本人次第。そうは言ってもそれを後押しするものが必要だったりするのも事実。興味と好奇心、勇気、タイミング、そして雰囲気。雰囲気というと抽象的だけど、でも良い企画というのはそれが必ずある。思うにそれは企画者の意識によるところが大きい。この日の空間にももちろんそれはあったと思う。
僕はそれなりに人並み以上にライブを観に行ってると思うし、ライブハウスだけではなく様々な場所で行われたライブを観ている。その経験から言っても今回の夜音車企画はベストと言えるくらいの、多角的な音楽の楽しみ方を享受できる、実に刺激的な空間であった。